とくしゅう Vol.2 2001.8

-イジートルンカの絵本のせかい-
人形・粘土・レリーフ・セルなどの傑作パペットアニメーションを生み出した
トルンカスタジオゆかりの人。
イジートルンカの説明はもはや蛇足といえるかもしれませんね。

勝手に自画像のっけてみたりして。
トルンカのアニメーションの2枚組ビデオをもってるのですが、その最後に
本人登場の場面があって、それみたときはこの自画像に思いっきり納得がいきました。
無口な職人という感じだけど、彼の作る人形はやっぱり彼に似ています。
特に首から肩にかけてのラインに特徴があるでしょ?そっくり。

そしてその彼が作る絵本はというと、彼独特の世界で彩られていることは
ご想像の通り。んで、この人は、やっぱり立体の人だなあと思うのでした。
平面なんだけど、奥行きがある。前提に立体やってないと、こういう奥行きってでないんですよね。
そして登場人物のケムリのように漂う存在感。
「生き生きしている」というのとはまた違う、生き物とはまた違う生命が宿っている感じなのでした。
「人形は人間のちいさなものではなく、人形には人形の世界がある」
という彼の言葉を考えれば、それは当然のことかもしれません。

遺作「手」で自らの創造の姿勢をピュアに表現したトルンカ。
トルンカの作品はどこからどうきっても金太郎飴的にトルンカなのです。
そしてやっぱり、どんなに時代が流れようと、
いまのちょっとしたチェコアニメブームが去ろうと、永遠のガンコ職人は
いつまでもワンアンドオンリーな人として、愛されていくに違いないと確信してます。


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花むすめのうた
フランチシェク・フルビーンさく/イジー・トルンカえ
ちのえいいちやく
ほるぷ出版 1992年第7刷
260*200
注文番号:J-045
価格:\1,500

チェコを代表する芸術家イジートルンカの絵本作品の中から。むかし、おじいさんとおばあさんがとても大切にしていた庭。2人が深い眠りについたあと、そこにやってきたかわいい花むすめ。花むすめは庭をふたたび花でいっぱいにしたけど、そこに冬婆の白くて冷たい手がしのびよる…。詩の文体で描かれる幻想的なお話にトルンカの存在感あるキャラクターたちが、不思議な生命力をもって動き出します。現在入手困難。



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ふしぎな庭
イジー・トルンカさく
ほるぷ出版 1995年第14刷
200*258
注文番号:J-046
価格:\2,000

トルンカ自らが文章も書いた唯一の絵本。絵本というより、読み物という感じの長編で、5人の少年たちが偶然発見した庭で、ネコじい、こびと、象を相手にいろんなお話を繰り広げます。原題は「庭」英語版では「まほうの門より」というタイトルででているそうです。言葉遊びや、ユーモアなど、ちょっと不条理系な感じもありますが、そこがまたまか不思議トルンカワールド。自在なレイアウト、いまにもとびだしそうな立体感あふれる絵はときどき動画を観ているような錯覚を覚えるほど。版元品切。


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お菓子の小屋
イジー・トルンカ絵/ハナ・ドスコチロヴァー文
金山美莎子/訳
佑学社 1983年第1刷
285*220
少ヤケ
注文番号:J-047
価格:\900

ヘンゼルとグレーテルをベースに、ドスコチロヴァーが、書き下ろしたお話です。独特な世界観、幻想的な雰囲気は、相変わらずですが、他の作品と少しタッチが違って、これも新鮮な感じです。絶版。



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わんぱくビーテック
ボフミル・ジーハさく/イジー・トルンカえ
ちのえいいちやく
ほるぷ出版 1984年第1刷
260*200
注文番号:J-048
価格:\1,200

わんぱくビーテックがしでかすニヤッと笑えて、ちょっときゅんとするいろいろなできごと。いろいろなお話が集まっている短編集のような形態になっているので、気軽に読めます。ページのあちこちにレイアウト的な遊びがあったりして、トルンカはグラフィッカーでもあったのね、と再確認。平面的な遊びと、相変わらずの立体感との不思議な調和があって、とにかく楽しい絵本です。個人的には「よそのおじさん」がすき。なんだか妙に笑えます。




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おじいさんのおくりもの
ヤン・アルダ作/イジー・トルンカ絵/保川亜矢子訳
ほるぷ出版 1984年初版/新古本
242*170
注文番号:J-439

ふるいこやで仲良く暮らすおじいさんとおばあさん。おじいさんはおばあさんに何か贈り物がしてあげたいとずっと思っていました。ついに思い立って、街にでかけたおじいさんは、川におぼれている商人を助け、お礼にいっぱいの金(きん)をもらいます…。
考えてみれば、これ逆わらしべ長者ともいえるお話です。わらしべ長者が、「知恵をつかってしあわせになる」、成長を説いている話だとすれば、これはしあわせの基本、根っこの部分のお話。お人よしのおじいさん、そしてそれをゆったり包み込むおばあさんの余裕、いいなあ…。学ぶべき。絶版。



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マミンカ
J.サイフェルト/イジー・トルンカ挿画/飯島周訳/佐々木幸綱監修
恒文社 1989年初版/新古本
263*172
注文番号:J-440

チェコの詩人、サイフェルトの詩集です。サイフェルト自身の亡きマミンカ(お母さん)に対するオマージュ。大切だったマミンカの後ろ姿を追うようなメランコリックな味わいを避けることはできないけれど、そこにうつっている姿はやさしくて強い、そしてなつかしい、生活のまんなか。誰のこころの中にもいるマミンカの姿。大好きだったケーキ屋のにおいや、汽車の煙、練習がいやだったバイオリン、紅茶の箱の不思議な絵柄、パイプを手にした父親の膝の感触。遠い国のチェコの日常であることを忘れて、自分の幼い頃を重ねて読んでしまうことばがあります。
そんなことばにやさしく寄り添うようなトルンカの挿絵にも注目。絶版。


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