至高社のひとたち

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いとでんわ
文と絵/おのちよ
至光社 1971年
250*250

ほんとはねことくしゅうでご紹介しようと思っていた、大好きな大好きなねこ本です。「おりにふれ身につけるものがふたつ。現実に所有するわけでなく、持ったつもりになって楽しむのだが、ひとつはお医者さまの聴診器、もうひとつは糸電話…」(あとがきより)ねこ大好き童話作家で詩人の小野千世の1970年代の作品。西のおやまに猫がいっぴき、東のおやまに学者がひとり、毎晩糸電話でおはなしします。「もしもし え もしもし」「そこからなにがみえますか」見えるのは花火みたいな街のあかり、見えるのはあまのがわ。細くてやわらかな糸でつながってるねことおじさんの、ちょっとさびしくて、やさしい物語です。
小鳥とキスする魅力的な肖像とともに、自由奔放なことばで書かれているあとがきにはまたこう書かれています。「糸電話はややしんみりした語らいに適している。あの山のてっぺんの棒っくいにきまって昼過ぎにやってくるトンビと、わたしはなんど通話したことだろう」おのさんは、糸電話で草や虫、けものとおしゃべりするのです。たしかに糸電話ならできそう。そんなきもちになれる夜にとりだしてきて、「もしもし え もしもし」
絶版。


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わたしのげた
武市八十雄・案/小野千世・文/絵
至光社国際版絵本 1969年初版
250*250

以前「いとでんわ」を御紹介した、個人的にもだいすきな絵本作家小野千世さんの絵本。
わたしはげたがほしかったの。それで…おかあさんのげたはわたしのげたになりました。
おかあさんのげたをはいたオンナノコの旅はげたまかせ。ひっそりしたたけやぶへ、ちょうちょうについていったり、ぶらんこでゆらり。船の汽笛がきこえる屋根のうえでせえたあを編んだり。小野さんがつくりだす独特のリズムの世界のげたをはいて、わたしたちもあっちへこっちへ。彼女が書くあとがきも、いつも味があってだいすきです。絶版。


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ほしはみたの
杉田豊・絵/武市八十雄・文
至光社 ブッククラブ1970年
248*248

至光社の武市氏の杉田氏とのタッグは、ちひろさんとのコンビとはまた違った濃密さで、数々の名作を生みだしていますが、個人的にはこの作品がもっとも好きです。あとがきにはこんな風に書かれていいます。「寒い冬の夜空に、キラキラ星が輝きました〜北の国の青い湖の上にいたひとつの星が、何かがおこったことを感じました。それは、つめたい空気の中のほのかに暖かく美しいできごとだったのです…こんなお話、書いてみたいな。私たちは話しつづけました」
さむいさむい冬の夜。こおりの教会から聞こえる静かな音楽。その窓から、つのもガラス、足もガラス、身体もガラスのきれいな鹿が音楽にあわせて駆け出します。クリスマスという特別な日の奇跡といまそれを分かちあえるしあわせを、讃美歌のように静かに語りかけてくる絵本です。"Wake up, little tree a Christmas fantasy"というタイトルで海外でも翻訳出版されました。絶版。


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もず
作版・初山滋/詞・古倫不子/曲・諸井誠
至光社 1967年初版
A4変型

ひさびさに、滋の絵本です。秋のテーマでというリクエストでできた本、滋の出した答えは、さまざまな「秋」のカットアウト。表題のもず、水車、きのこ、昼のあそび、しきだんす、わすれもの、わたりどり、いねかり、あきまつり、はっぱ…。自刻自摺の版画で、秋が丹念に描かれていきます。幽玄、夢まぼろしモダンな滋の世界そのものです。そしてそれぞれのシーンに、添えられたことばは詩ではなくて、詞。古倫不子って誰って感じですが、コロンブスと読みます。滋本人の遊びです。これに諸井誠の曲がつきます。とくに「きのこ」が最高。
へんなものがきたよ こちょ こちょ
あれはなんだろう こちょ こちょ
みたことがないね こちょ こちょ
もずにきいてみよう
そこにきたおばけはなあにとね こちょ こちょ
おばけではない
でくきなきなだと
もずはこたえた
「書きそえ」と題したあとがきも最高。「今からざっと一時代前、わずかな小裂れ、端裂れを、丹念につなぎあわせ、縫い合わせできた着衣、それはみみちい、絢爛な下着用である。それなどがこの絵本にまがう類似点が、ありはしないかしらと、ふと古いものへの幻覚が交叉する…」言い得て妙です、滋さん。

この版は絶版。