おやすみなさいの時間に。
きょうの終わりに、ベッドのうえで
ちびっこ本の星を空にばらまきます。
ページを繰るしずかな音だけがひびいて、しんしん夜がふけていく。

※こちらの本は現在ソールドアウトになっております



GOODNIGHT MOON
by Margaret Wise Brown,Pictures by Clement Hurd / Harpercollins

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やはりまずはこの本を。もうちびっこ本の定番中の定番ですから、これといってコメントの必要もない、って感じですが、これはやはり翻訳版でなく、ぜひ原語で、しかも声に出して読んで欲しい本です。脚韻と静かなリズム、まさにワイズブラウンの得意技です。少しずつ、少しずつ夜が深まっていき、画面が暗くなっていく、夜へ動いていく神秘的な時間のあの雰囲気が閉じこめられているクレメントハードの絵とともにお楽しみください。音を楽しんでほしい、ということで、アマゾンは、カセットの方にリンクしておきます。




しずかなおはなし
サムイル・マルシャークぶん/ウラジミール・レーベデフえ/うちだりさこやく/福音館書店

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ロシアの代表的な絵本です。ロシアのおはなしの主人公に、はりねずみってよくでてくるような。ノルシュテインの「きりのなかのはりねずみ」もそうでした。そういえば、この藍色の夜の感じも共通してます。「森は生きている」でもおなじみ、詩人マルシャークが書いたお話は、はりねずみの親子がおおかみから身を守る話なんだけど、しずかにはじまって、しずかにおわります。こどもじゃなくても、このおはなしを読んでいるときは、しっ、しずかに。音をたてちゃいけないような気分。そしてどこからか、深い深いロシアの森の息づかいがきこえてくるような気がします。




つきあかりのにわで-サマータイムソング
アイリーン・ハース作・絵/渡辺茂男・訳/福音館書店

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アイリーンハースの作品は、もうちょっと大きな画像で見てほしいと思うのですが…。「わたしのおふねマギーB」とか「カーリーおばさんのふしぎなにわ」など、すばらしい作品を送りだしている作家です。(そういえばマギーBにちなんだカフェが、京都にありますね)
ルーシーは、庭の虫や鳥たちとのパーティーに招待されます。招待状は、まほうの紙の帽子。それをかぶると、いつの間にか木の葉のように小さくなって、月あかりのさす庭に出発。そしてルーシーは「わたしの物語はハッピーエンドでおわるのですか」とたずねる、ある人形に出会います…。
夏の夜にふさわしい、ふしぎで幻想的な世界。ハースは日本趣味で有名ということもあって、この本に登場するお人形は日本人形だったり、桃の横にてまりがぽんと置かれていたり、こうした細かいひとつひとつが和でも洋でもない、ハース独自の幽玄の世界をつくっています。見る人も虫になったつもりで、1枚1枚、磨きあげられた宝石のような絵にじっと目を凝らしてみて欲しい1冊です。




もりのなか
マリー・ホール・エッツぶん/え まさきるりこやく/福音館書店




わたしの大好きな作家、エッツの代表作です。この本は、なんか「しんしん」ていう形容詞を使いたくなる感じです。とてもしずかなところで耳をすましている感じ、空気が、しみいってくる感じ。でもぜんぜん陰気くさいのではなくて、ただただしずかでやさしいのです。そして動物がいっぱい。
この「もりのなか」は代表作だけあって、やっぱりいちばんエッツらしい本だなあと思います。かみのぼうしをかぶり、新しいらっぱをもってもりへでかけたぼく。道中であう動物たちを行列に加えて、もりのなかのパレードが続いていきます。たのしくてすこしさびしいこの本、じつはエッツがガンの夫の最期の日々を看取りながら書いた本なのです。




またもりへ
マリーホールエッツ 文・絵/まさき るりこ 訳/福音館書店

とくいなこと自慢

「もりのなか」のつづき、とでもいうべき本です。そういえば、動物たちは「また遊ぼうね」と言ってましたからね。さて、今度の「ぼく」は森の中がさわがしいので、様子を見にいくと、みんな自分の得意なことをやって、だれがいちばんいいかうでくらべをしていました。そして、最後のオチになっとく。いちばんステキなことって、やっぱり、そう。例のしんしんした森の中の感じふたたび。セダーの香りが漂ってきそうな…。




ゆめくい小人
ミヒャエルエンデさく/フックスフーバーえ/さとうまりこやく/偕成社世界のえほん

まどろみ国のよる
おうさまは世界中を旅する
おなじみエンデの小品です。絵は同じくドイツ人のフックスフーバー。入魂の一作で、たいへん美しく、心の深層にまで響くような絵本に仕上がっています。まどろみ国の王女さまはこわい夢のせいで眠れなくなってしまいます。それを救ってくれるのがゆめくい小人。ウチにも来てほしいわーと言う方は、この本の中のじゅもんを唱えてみましょう。きっと気持ちよく眠れるはず。定価1300円+税。



夢のボロ市真夜中に小声でうたう
ミヒャエル・エンデ/丘沢静也訳/岩波書店

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エンデの詩集、ならぬ『詞集』、歌われることを前提としたソングブックです。市井の人々の憧れや夢、希望や願い、心配ごとや悩みをうたい、語ってきたドイツの「リート」(歌)。ロマン派以降、サロン文化に根付いてしまい、特殊なものとなってしまったこのリートを、ふたたび日常のものに戻そうというエンデの試みでもあります。「リートのテキストは詩ではなく、音楽のために余地をあけて、音楽を挑発するものである」と本人が語るとおり、表紙の幕開けとともに、「金色の雲のソング」「不道徳なモリタート」「空飛ぶ夢」「夜の雨のバラード」など、笑いも、なみだも、皮肉もたっぷりエンデ流、エンタテインメントとしての言葉のショウがはじまります。
もうひとつ、この版の面白いところは、各見開きの左下についた司修氏による、ちいさなパラパラまんが!訳者のちびっこ的、粋なはからいです。以前御紹介した「おとなしいきょうりゅうとうるさいちょう」と同様、ヴィルフリート・ヒラーによる音楽もついていて、一部、手書きの楽譜もそえられています。口ずさんでみますかね。真夜中に小声で。



エンデのいたずらっ子の本-Das Schnurpsenbuch-
ミヒャエル・エンデ文/ロルフ・レティヒ絵/川西美沙・飯吉光夫訳/岩波書店


いたずらっ子ってどんな子?
エンデファンなら、一家に一冊の、ナーサリーもの。エンデ版、マザーグースと言えばいいでしょうか。エンデ一流のナンセンスにニヤリと笑えて、そしてそこからこぼれているやさしさにほんわかとできる本。うすらさびしい秋の夜の枕もとにおすすめです。イラストは、ケストナーや、クリュスものにもよく登場するレティヒ。すこし前、全集でも再販されたのですが、それにはこのなんともユーモラスなイラストが載ってなかったのですね。
永遠のいたずらっこたちにオビのこのコトバを贈りましょう。
[憶えがあるでしょう。うたは時計をこえるもの。いたずらは愛、いたずらは夢、いたずらは永遠。やりだしたらもう、やめられない
まちがいは自由、さかだちは自由、しらんぷりは自由。
あなたが大人だって子どもだってかまわない
あけえてみて!エンデとレティヒのこの本
旅びとなら木陰が、迷い子なら暖炉がみつかるはず
万が一死んだとしても、百万回生きかえるはず]

版元品切、重版未定。



Sun is Falling Night is calling
by Laura Leuck/illustrated by Ora Eitan / Simon & Schuster Books

そろそろ遊びの時間はおわり
ローラルークの処女作に、イスラエル生まれの画家オラ・アイタンが絵を描いたものです。このオラ・アイタンもわたしの好きな画家のひとりで、さらっと描いた太い線と、スクラッチしたような細い線のずれたような感じがいい味だしてます。ほかにもかわいい作品があるので、ぜひチェックしてみてください。しずかな夕方から安らかな夜がくる時の流れが、単純だけど美しいことばと、ページをめくるごとに深くなる色調で表現されています。あたたかい部屋、おやすみのお話とこもりうた、一緒に寝るテディ。登場人物はうさぎのおかあさんとこどもだけ。ぽつんとふたりっきり、って感じなのだけど、そのせいか余計に、ふたりの絆みたいなものが温かく伝わってきます。



空がレースにみえるとき
エリノア・L・ホロウィッツぶん/バーバラ・クーニーえ/しらいしかずこやく/ほるぷ出版

レースの夜にむかってかけていく。
空がレースにみえるビムロスの夜は、むらさきいろ。かわうそはうたい、木たちはダンスして、草はグズベリージャムの味になる。そしたら、女の子たちは、とくべつのパーティーにでかけるのです。ひとだび本をあけると、その世界にひっぱりこまれてしまう…バーバラクーニーの夜の世界へ、いっしょにかけていきたくなります。現在定価1600円。




木馬のゆめ
ほるぷ出版名著復刻シリーズ24/酒井朝彦作/初山滋装画/ほるぷ出版

かつての児童文学の名著をほるぷ出版が復刻したシリーズものの1册。昭和5年金蘭社版、早稲田の童心主義童話作家の酒井朝彦の童話に、初山滋が装丁、絵を担当。
「すずしい風の吹くなつのゆふがた、
小さな木馬はおざしきのすみでころりとよこになっているうちに
うつらうつらとねむってしまひました。」
滋の美しい装丁にうっとりしつつ、木馬といっしょに夢うつつ。



回転木馬
エヌ・カルパコーヴァさく/タチアーナマーヴリナえ/たなかやすこやく/ほるぷ出版

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ほるぷの国際アンデルセン賞受賞作家シリーズの中の1冊、タチアーナマーヴリナの絵本です。ロシアの土人形たちの回転木馬。「のったりのったり回転木馬。1カペイカ払った人は木のいすへ、5カペイカのひとは馬にまたがりハイドウドウ」としちめんちょうが呼べば、おんどりがとさかをゆすっておかねを集めます。そして、羊やトナカイにのったおにいさんたち、くまのミーシカ、犬のジューチカ、貴婦人たちや、ちゃ色のお牛まで、回転木馬は超満員。個人的には、マーヴリナの作品の中で、この本のまるでおもちゃがいっぱい、にぎやかな感じがいちばん好きです。以下マーヴリナの紹介として、カバーのコピーより。「私はマーブリナの絵でも線画でも、目にすると、その絵にふれて、おとぎの世界を掌で感じてみたり、その絵が放つかおりを吸い込みたくなってしまう。ライプニッツの音楽についての定義を思い浮かべてみる『心は知らず知らずのうちに計算している』その定義をそのままマーヴリナの作品に、彼女の才能に純真無垢な魂に、子供のように周囲のものを吸収し、この世の美を探し求めるそのひとみにあてはめることができる」。版元品切。



Twilight Tales
by Miriam Clark Potter,illustrated by Dean Bryant / A Rand McNally Elf Book 1962年

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エルフブックシリーズの中から、タイトルだけ聞くと、コワイ話?と思うのですが、ご覧のとおり、とてもちまちまっとかわいいディーンブライアント(エルフブックの常連イラストレーターです)のイラストのほのぼの話です。めんどりと、りすのお母さんが主人公の2話が収録されています。めんどりさんのお話は、赤い帽子が欲しいと思い立って、こどもたちと地面の下にあるねずみデパートや、ふくろうのおばさんの店に探しにいきます。りすのお母さんの話は、学校から帰ってこないこどもをしんぱいする話。自分の木の家の階段をのぼってやってくるいろんなお客さんとお話した後、なぜかいちいちキャラウエイのケーキをふるまうリスお母さんがほほえましいです。



ほしのこのひみつ
アルカディオ・ロバト作/若林ひとみ訳/フレーベル館

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「そらをとんだくじら」などでもおなじみのアルカディオロバトの絵がとてもとてもきれいで、一面の星空に包まれているようなキモチになる絵本です。
さわやかな夏の夜、ヘレンがいつものようにお母さんにお話を読んでもらっていると、そのお話を聞いたほしのこが空から降りてきます…。
見返しのページも一面の星空。本全体に流れる夜の色と星の輝きがほんとうに美しい絵本です。



バクのなみだ
あまんきみこ・作/安井淡・絵/岩崎書店

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「車の色はそらの色」「どんぐりふたつ」でおなじみ、あまんきみこは個人的にも大好きな作家で、なにか何度洗ってもシャツにうすく残るシミのような、ちょっとシュールさのまじった悲しみがつまったお話を書かせたらナンバーワン、と個人的に思ってます。そしていろんな意味で日本的な人だとも。
で、こちらもやさしいバクと、ネコのミュウが主人公のなんともシュールなお話です。ミュウ以外、誰にも知られることなく、人知れずこわい夢を食べてあげるやさしいバクは、最近の浮き世に忘れ去られている「含羞」と申しますか、そういったものを思い出させてくれて、決してハッピーエンドではないのですが、すーっとここちよい涼しさを残してくれるお話だと思います。