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かぼちゃひこうせんぷっくらこ レンナート・ヘルシング作・スベン・オットー絵・奥田継夫、木村由利子 アリス館 1987年7刷 260*205 タイトルからして、いいですよねえ。ぷっくらこ。おおきなくまとちいさなくまはいつも一緒。はちみつを食べていたらたねがでてきました。さっそく雨のなかたねを植えると、ぐんぐん育って特大かぼちゃになります。くまたちはかぼちゃを船にして海へ。そしてひこうせんにして空へ。「ぼくたちそらくまだな」「そんなくまどこにもいないよ」「えほんの中にいるじゃない」そしてのんびり空をぷっくらこです。 こんなたのしい空想の詩を書いたのは、がいこくのほんだなでご紹介していたread for funシリーズでもおなじみの、スウェーデンの代表的な詩人、レンナートヘルシング。マザーグースやミルンをスウェーデン語訳している人でもあります。そして、アンデルセンものの絵でもおなじみのスヴェンオットーがとっても味のある絵を描いています。 そしてこちらの訳も奥田氏。あとがきがものすごくいいのです。ツェッペリンからツベルクリンに言及する飛行船礼賛。すてきなおまけつきという感じです。おトクなかぼちゃだこと。 |
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こどもの情景 A・A ・ミルン著/ル・メール挿絵/早川敦子訳 パピルス ミルンといえば、プーさん、プーさんといえばミルンですが。もともとは風刺漫画「パンチ」の編集に携わる一方、独特のユーモアを駆使したエッセイや詩を書き、1926年にこどもの詩の本「when we were very young」を出版。そして翌年発行されたこの本は、のちに出た「Now we are six」とあわせて、のちの「プー横丁」への布石となった作品です。原題「The gallery of children」の「gallery」をなぜ「情景」と訳したか、あとがきで訳者が語っています。「鋭い感覚とユーモア、そして何より、リズムと不思議なひびきをもつ『ことば』を通して、『こどもの領域』に踏み込んでいったミルン」 「こども」が「こども」らしくあるがままの視線、それを見つめるかつて「こども」であったオトナの視線、2つの視線が交差するところに結ばれ、浮かびあがる「こどもの情景」。表紙のジェイン・アンが見つめる窓の内へ、外へ…オトナの私たちは行ったりきたりしながら、ミルンの描いた情景を旅していきます。 そしてこの本の幸福の1つは、ミルンの詩がオランダの画家ルメールの挿し絵に出会ったことにもあると思います。「王女さまとリンゴの木」「海べのお城」「小さな銀のカップ」「バーバラの誕生日」など全12篇のこどもたちの情景の輪郭をあざやかな手さばきで縁取っています。 |
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あなはほるものおっこちるとこ ちっちゃいこどもたちのせつめい クラウス文/センダック絵/わたなべしげお訳 岩波こどもの本 207*164 ルース・クラウスのリズミカルな文章に、ちまちまかわいいセンダックの絵。「マッシュポテトはすきなだけたべられるもの」「おやゆびはひょこひょこうごかすもの」「じめんはおにわをつくるためにあるの」時に言いえて妙、時にはてな?なちびっこたちの言葉のせつめい。でも、ここはオトナの理屈なんてすてて、ちびっこのせつめいで物事の核心に迫りましょう。かちかち頭で考えるより、ずっと近道だったりします。 |
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ももいろのきりん 中川李枝子作/中川宗弥絵 福音館書店 A5変型 この本はもう説明は必要ないかもしれないですね。中川夫婦コンビの最高傑作。ももいろの画用紙で作ったきりんのキリカとるるこのちいさな冒険。せかいいちがだいすきなるること、頼りになる相棒キリカのお話がすごくうらやましくて、自分も画用紙で、このすてきな「相棒」を作ってみようと試したりしたものでした。そらいろのうさぎ、オレンジいろのくま、レモンいろのさる、バナナみたいにクレヨンがいっぱいなってる木…。いっぱいの色が絶妙にかけあわされて、調和してます。2色のページのももいろと、りりこの線画もすごいおしゃれです。最後にキリカが作ってもらった家がものすごくうらやましかったなあ…。 |
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フョードルおじさんのいぬとねこ エドアルド・ウスペンスキー作/スズキコージ画/ 松谷さやか訳 福音館書店 1988年初版カバー A5変型 チェブラーシカ原作でおなじみのウスペンスキーのお話にコージズキンの絵というなんとも楽しい1冊。チェブラーシカ同様、一見ちょっとおとぼけ、よく考えると、そんなことってあるの!って感じの奇想天外なストーリーがたんたんと語られていて、もうクスクス笑いを禁じ得ないお話です。フョードルおじさんというのは、じつはおじさんではなくて、ちいさな男の子。字も読めるし、スープもつくれるし、なんでも自分でできるので、「おじさん」とよばれているのです。ある日、お話ができるねこといぬに出会ったフョードルおじさんは、とつぜんひとりぐらしをするため、書き置きをして家出をします。そして1人と2ひき(のちにプラス2ひき)のきみょうな共同生活がスタートするのです。 手持ちのお金がなくなったら、たからさがしでお金をみつけたり、お手紙を書いて、人間のごはんが燃料のトラクターをもらったり、ねこが自分のミルクのためにめ牛を買ったり、知りたがりやの郵便屋さんとからすの子のくわえんぼうの押し問答など、凡人にはとても思いつかないお話は、なんかちっちゃい子が見る夢のようでもあります。そんなお話に、無国籍な感じのスズキコージの挿し絵がぴったりで、タイトルにあしらったロシア文字や、見かえしのデザインとかもむちゃくちゃかわいい!版元品切。 |
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きいろい家 ブレイク・モリスン作/ヘレンクレイグ絵/清水奈緒子訳 セーラー出版 1990年初版 B5横変型 詩人、ノンフィクション作家、元「オブザーバー」誌の編集者、とさまざまな顔をもつブレイクモリスンと、写真家でもあるヘレンクレイグの芸達者コンビ。幻想的なお話に、銅版画とやわらかな色彩が美しい本です。それとこの日本版の装丁、原書の雰囲気を失わず、よくできているなあと思います。 毎日ママといっしょに通る道にあるきいろい家。ある日、オンナノコはどきどきしながら、その家の木戸を開けます…。 小さいとき、ご近所で妙に気になる家とか、あこがれの家とかなかったでしょうか。その家のなかにこっそり入って探検してみたいと思ったことは?もし勇気を出して入ってみたら、この本のように小さな男の子がでてきて、不思議な世界に連れていってくれたかもなどと、オトナになった今、想像してみるのも楽しいのでは。 |
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パッチワークのかけぶとん ウィリーマイン・ミン文・絵/清水奈緒子訳 セーラー出版 1991年初版 A4変型 オランダのウィリーマイン・ミンのまさにふかふかおふとんの夢の中のようにほんわかした絵本です。 ちょっとばかり具合が悪いピーターは、ベッドの上ですることもなくたいくつ。でもぼんやりパッチワークのふとんを見つめているうちに、模様の中のお花畑、のいちごの野原、鳥たちや、うさぎたち、りんご畑へ…。ピーターの夢の中のおふとん旅行がはじまります。 天井の模様が動物に見えたりとか、机の木目に人が見えたりとか、小さいときってそうやっていつでも日常から夢の中に飛び込む穴がいっぱいあったような気がします。つまらない白昼夢といってしまえばそれまでだけど、ちびっこたち特有のそういうモノの見方を思い出してみると、なんか新しい愉しみが見出せそうな気もいたします。 |
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まほうのじゅうたんあそび ニコラス・ヘラー作/そのひかる訳 評論社 1995年初版 208*250 おなじ連想で、こちらはカーペットから生まれた楽しいお話の絵本を出してきました。川みたいに青い玄関のじゅうたんで釣りあそび、野原みたいに緑色のダイニングのじゅうたんでピクニック、ムクムクのしろくまじゅうたんで北極へ。魔法のじゅうたんがなくたってちびっこはどこへでも飛んでいけるのです。 |
まどの向こうの教会 馬 人 |
まどのむこう チャールズ・キーピング絵と文/いのくまようこ訳 らくだ出版社 ちいさなジェコブの世界のすべては、まどのむこう。結婚式と葬式がある教会、せっけんばあさん、ばあさんの犬、すごい勢いで走ってきた馬、馬たちが起こした事件。すべてはまどの向こうのお話なのです。そしてジェコブは想像します。 キーピングの初期の絵本を見ると、こころが妙にざわざわします。不協和音のように、何かがぶつかって、気がかりなものを残します。ロンドン生まれの彼が登場したときは絵本界に少なからず衝撃を与えたことは言うまでもありません。いまは窓の内側から、達観という、まさしく「まどの向こう」側に行ってしまった感のあるキーピングですが、じつはわたしは今でもこの内省的でサイコで紛れもなくロンドン的な本に、惹かれ続けています。たぶん一生。彼自身も自分の絵本についてこう言ってます。「わたしはリアルな色は使わない。それは見当違いだから。ぎいぎいきしるような不調和な色を使うと、それでロンドンの響きが描けるような気がするのだ」 |
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うたうポロンくん 藤田圭雄作/和田誠絵 小峰書店創作幼年童話2 昭和43年初版 B5 「少年少女」や「赤とんぼ」の編集者、童謡作家でもあった藤田圭雄のお話は、とちゅうでゆかいな歌が飛び出してくるたのしい趣向の本。朝、草のつゆがいっぱいの野原で、ジローは「おんぷ」のポロンくんと仲良くなります。ポロンくんが行くところ、音楽がいっぱい。犬がとつぜん歌い出したり、マンガのうたを歌ってくれたり…。お話の中にでてくる歌は中田喜直、伊藤翁介の作曲となんともゴージャス。楽譜もついてるので、「ピアノにあわせてうたってください」とは作者の弁。歌ってみたところ、さすがの中田メロディ。「いぬの子」が好き…。モノクロですが、和田誠のカットもバランス良いグラフィカルな仕上がりになってます。絶版。 |
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けんはへっちゃら 谷川俊太郎著/和田誠画 あかね書房創作どうわ絵本7 1966年2刷 B5 谷川-和田名コンビの絵本。やはり「けん」は谷川さんの息子さんの賢作氏のことなのですかね?お話は、けんのポケットのひもが、おばあちゃんの役にたち、ふうせんに、ふうせんがキャラメルに…と、昭和のわらしべ長者的なかんじ?ただ、けんはぜんぜんうれしそうじゃなくて、ときどきおならをしながらマイペースなところが笑えます。ソウルバスや、ベンシャーン影響下にあったライトパブリシティ時代の和田誠の大胆な色づかいと面構成が楽しいです。 あかねから復刊していますが、この箱入りの版は絶版。著者近影のお若くダンディなご両人(キメキメ)も見物です。 |
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あるようなないような話 ライナー・クンツェ作/野村ひろし訳 和田誠絵 岩波書店 1975年初版 A5 旧東ドイツ詩人のライナー・クンツェの、最高におとぼけで風変わりでナンセンスなお話集。献辞に「マルセラ、この聞きたがり屋のために」とあるように、娘のマルセラにせがまれてクンツェが考えたお話です。おもちゃのライオンだったレオポルドがとつぜんサーカスに入団するお話「ライオンのレオポルド」(郵便局員のおとぼけっぷりが最高!)、入院中のダニエルに届けられるたこのヤーコップが他のゆうびんうけに入った手紙仲間たちと旅する「たこのヤーコップ」、ちょっとぼーっとしたルードヴィッヒが迷子になったことで、おまわりさん、消防署、煙突掃除人(?!)までまきこんでおおさわぎする「ルードヴィッヒ」、それから「おまけ」の嬰ニ音のお話、「もうひとつおまけ、おまけはこれでおしまいです」の『どうしてタンポポの花は黄色いの』の詩まで、どれもこれも奇想天外&真顔ではぐらかされてるような、まる子の野口さん的なくっくっという笑いがこみあげてくるお話です。しかーし、あの苦労人&反体制の人-クンツェですから、毒と、風刺と、人生のペーソスのようなものが盛り込まれているのも当然。たとえば「よく笑う人はなかなか心がくじけないものだ」といった言葉や、「ルードヴィッヒ」の警官の空いばり、規則にしばられて結局右往左往してしまう大人など…からっとした読後の小気味よさが持ち味です。絶版。 |
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Katie Morag's Island Stories the Bodley Head,London 1995年 by Mairi Hedderwick 205*270 カバー イギリスのちびっこたちの間で大人気のカティーという女の子のシリーズ。カティーが住むのはスコットランドの架空の島、ストュレイ島。エジンバラ美術学校に学んだヘダーウィック自身が、かつて住んだコール島をイメージさせる風光明媚な島です。カティーをとりまく人々たちもとっても魅力的。げんきな郵便局長のママと食料品屋のパパ、そして島の裏側に住みトラクターをぶっとばす男気(?)あふれるかっこいい島のおばあちゃん。メインランドから遊びに来るおしゃれで美人のおばあちゃん。人情あふれるストゥレイ島の人々…。そしてなんといっても開放感あふれる淡水彩の絵!細かいところの描きこみの芸もすごいです。この本は4話のオムニバス構成、お話としてもかなりボリュームある本なのですが、話の展開もさることながら、すべての見開きいっぱいに絵が広がっていて、ページをめくっていると、まるで1冊のスケッチブックを見ているような楽しさが味わえます。 収録されたお話はいずれも未翻訳。「カティーの郵便配達」(忙しいお母さんにかわって郵便配達にでかけるも、川に郵便を落としてしまうカティー)、「カティーと2人のおばあちゃん」(島のお祭りにメインランドのおばあちゃんが登場。ひつじ品評会で思わぬ活躍)、「カティーとくたびれテッド」(赤ちゃんが生まれてみんなに相手にされずさびしいカティーは怒りにまかせてたいせつなテディベア、テッドを海に捨ててしまいます。テッドの運命やいかに)、「カティーとビッグベイのいとこたち」(キャンプでやってきたいとこたちと大暴れのカティー。バーベキューがうまそうです) 元気で、ときどきブチ切れして、でもじつはやさしい子のカティーはとてもリアルで感情移入できる女の子。イギリス版ロッタって感じ?男まさりなママやおばあちゃんなどもキャラ立ちしていて、こうした人々が織りなすストゥレイ島の人間模様も楽しいシリーズです。映像化もありうると思う…。ていうか希望。 |