しあわせのかたち。

いつもとなりの芝生は青いけど…。
しあわせの尺度はやっぱり人それぞれなのだということを思い出させてくれるちびっこ本。
ヘンに観念的だったり、うさんくさかったり、説教くさかったり、じゃなくて
読むだけで、いっしょにうれしくなっちゃう、そういう本がいっぱいです。
しあわせなきぶんを贈りたいときにもぴったりかも。

※こちらの本は現在ソールドアウトになっております。
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たんじょうび
ハンスフィッシャーぶん・え/おおつかゆうぞうやく/福音館書店

トビラがこれまたかわいいのです。
プレゼントのケーキづくりにおおいそがし
おばあちゃんおおよろこび
いちばんうれしかったプレゼント
ウチではおなじみのスイスを代表する絵本画家ハンスフィッシャーの大好きな動物が総登場のかわいい1冊。ネコ、イヌ、ウサギ、にわとり、あひる、やぎを飼っている動物が大好きなリゼットおばあさん。今日は、おばあさんのたんじょうび、動物たちは喜んでもらおうといろんなプレゼントを考えます。そして最後にいちばんおばあさんがよろこんだプレゼントは…。表紙の周りの飾り罫みたいなやつ、なにげに動物がデザインされたものです。こういうさりげないんだけど、じつはちゃんとこだわりをもって描きこんであるところが、まさにフィッシャー流儀。




きょうはわたしのおたんじょうびよ
キャスリーン・アンホールト作/角野栄子訳/文化出版局

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イギリスのほんわか系イラストレーター、キャスリーンアンホールトの作品です。原題は、The snowfairy and the spaceman.キャスリーンは自分の子供を育てながら、その成長とともにちびっこと同じ視点での絵本を生み出してきた人。ご主人のローレンスが文章を書くという、めおとパターンが基本になっていますがこの本は文章もキャスリーンが担当しています。
おたんじょうびを迎えたアンナはようせいの格好をして大喜び。パーティーではお友達のちびっこのみんなからプレゼントをもらうのですが、ひとりだけなじめない子がいました。キャスリーンのこどもの世界を見つめるやさしい目を感じる作品です。キャスリーンのオフィシャルはこちら。かわいいチンパンジーのチンプアンドジーのページもあり。




くまのコールテンくん
ドン・フリーマンさく/まつおかきょうこやく/偕成社

ボタンをさがしにいくコールテン
あったー!
よかったです
原題は「corduroy」、映像化もされたドンフリーマンの代表作です。ちょっとだけ不良品のくまのぬいぐるみと女の子のまさに一期一会な出会い、オトナになってしまうと気づかずに通りすぎてしまうような、小さな瞬間からはじまる結びつきを描いた作品です。このお話を、なんてことはなく読み飛ばしてしまうか、きゅーっとなるか、そのへんが人によると思うのですが、なんだかちびっこ度のリトマス試験紙のような作品です。




PANTALOON
by Kathlyn Jackson,Pictures by Leonard Weisgard/LITTLE GOLDEN BOOKS

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かつてNewYorker、Harpers Bazzar誌の美術担当であり、「ちいさな島」ではコルデコットも受賞したレナードワイスガードのイラスト。しかもダイカットウィンドウ版(表紙の犬が顔を出している窓枠が切り抜きになっています)とあって、LGBコレクターの間でも、かなり人気が高い本です…というウンチクよりも、この黒プードルがただただかわいいのと、ケーキ屋さんのディスプレイがオヤツ系のツボをつきまくりということで、個人的にとても大好きな本なのです。
お話は、パティシエ志望のプードルが職人募集の紙をみて、お菓子屋さんにいくのですが、がんこ店主に相手にしてもらえません。そこでおばあさんに変装して潜入しようとするのですが、バレたり…。でもそんながんこおやじ店主がいちばん困ったとき、力になったのは、あの黒いプードルなのでした…。ちなみに仏版のタイトルは「Caramel」ーかわいー。





おばあさん空をとぶ
ピアスさく/まえだみえこやく/やまなかふゆじえ/文研出版

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「トムは真夜中の庭で」でおなじみピアスの作品です。わたしのちびっこ時代の課題図書だったのですが、夢のあるお話と、この山中冬児の絵がものすごくかわいくて、かなりしつこく何度も読みかえした記憶があります。
ロンドンで風船を売って暮らすコクルおばあさんはねこのピーターだけがたいせつなたいせつな家族です。ところがある日、たいせつなピーターが家出してしまい、ショックで痩せ細ってしまったおばあさんは、知らない間に、風船といっしょに空に飛ばされてしまいました!
この手書きのタイトルと、色とりどりの風船、ねこのピーターのかわいさは特筆すべき。そしてピアスとしては軽い感じのハッピーエンドが心地良いお話です。




いとでんわ
文と絵/おのちよ/至光社

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ほんとはねことくしゅうでご紹介しようと思っていた、大好きな大好きなねこ本です。「おりにふれ身につけるものがふたつ。現実に所有するわけでなく、持ったつもりになって楽しむのだが、ひとつはお医者さまの聴診器、もうひとつは糸電話…」(あとがきより)ねこ大好き童話作家で詩人の小野千世の1970年代の作品。西のおやまに猫がいっぴき、東のおやまに学者がひとり、毎晩糸電話でおはなしします。「もしもし え もしもし」「そこからなにがみえますか」見えるのは花火みたいな街のあかり、見えるのはあまのがわ。細くてやわらかな糸でつながってるねことおじさんの、ちょっとさびしくて、やさしい物語です。
小鳥とキスする魅力的な肖像とともに、自由奔放なことばで書かれているあとがきにはまたこう書かれています。「糸電話はややしんみりした語らいに適している。あの山のてっぺんの棒っくいにきまって昼過ぎにやってくるトンビと、わたしはなんど通話したことだろう」おのさんは、糸電話で草や虫、けものとおしゃべりするのです。たしかに糸電話ならできそう。そんなきもちになれる夜にとりだしてきて、「もしもし え もしもし」
絶版。



しあわせどおりのカナリヤ
チャールズ・キーピング絵と文/よごひろこ訳/らくだ出版デザイン社

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おなじくキーピングの初期作品の1冊です。「しあわせどおり」という通りに住む、なかよしのチャーリーとシャーロット。でもシャーロットのひっこしがきっかけではなればなれになってしまいます。チャーリーは、2人がずっとすわって眺めていた角のことりやのカナリヤを買って、それを眺めてはシャーロットを思い出すことにします。ところがある日カナリヤが逃げ出して…。キーピングにしては、ここで描かれているのは「2人」と「1人」のコントラスト。でも、「まどのむこう」と決定的に違うのは、相手がいる孤独、相手を思う孤独であり、そのぶん、登場する人々にも「顔」があり、他者とのつながりを感じます。そのせいか、一貫した初期のキーピングの孤独シリーズの中でも、暖色系が多くて、「自分内爆発度」が低い、マイルドな味わいの作品です。版元品切。



リンゴの木
ミーラ・ローベ文/アンゲリーカ・カウフマン絵/八木博訳/女子パウロ会


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ミラローベといえば以前、とくしゅうで紹介した「リンゴの木の上のおばあさん」といい、リンゴ好きなんでしょうね。お話は、とある果樹園に春が来たところからはじまります。そこへやってくるさまざまな訪問者--ちょうやコマドリ、もぐらにヤマネ、はりねずみ…ほかの木たちがいやがる動物や虫たちを来るもの拒まずという感じで受け入れ続けるリンゴの木のお話。そして寒い冬がきても、足下に冬眠したヤマネの気配を感じながら、リンゴの木は少しもさびしくないのでした。このリンゴの木が示す受容は、ドイツに生まれたユダヤ人として亡命生活を強いられた彼女ならではのテーマといえそうです。オーストリアのアンゲリーカカウフマンの季節ごとの木の表現、かわいい動物たち、なんとも満ち足りた、しあわせな気持ちになる絵本です。




はなのすきなうし
マンローリーフおはなし/ロバート・ローソンえ /岩波書店

同じく岩波子どもの本シリーズより。「ふぇるじなんど」は花のすきなのんきもののうしなのに、ちょっとしたかんちがいから闘牛場につれていかれて…。まわりの「こうじゃないと」みたいな先入観にどうにもついていけないふぇるじなんどのマイペースさ加減がおもしろくて、そして、ふと自分は?と問いかけたくなります。




しあわせなちょうちょう
イレーナ・ユルギュレビチョーバさく/グラビアンスキー絵/うちだりさこやく
学研版新しい世界の幼年童話シリーズ

ハーニャ。かわいい!
ちょうちょに家を描いてあげる
お絵かきするハーニャ
「絵本から童話にすすむお子さまにぴったりのシリーズ」として、60年代後半から、世界のさまざまな作家と画家の作品を紹介した学研のシリーズから。アンデルセン賞を受賞しているポーランドの児童文学作家ユルギュレビチョーバの作品。そして絵は少し前にここでも紹介した「ねこねここねこ」のグラビアンスキーが担当しています。ハーニャというちっちゃなオンナノコと年寄りの画家との交流のお話で、画家がハーニャのために描いてあげたちょうちょが、ちいさな声ではなしかけてきます。ちょうちょによれば、「この絵では僕はしあわせになれない」ということで、画家は何度も何度もちょうちょのために絵を描き直します。奔放なタッチと、鮮やかな色彩のグラビアンスキーの絵がすばらしい。ハーニャのかわいい写真と絵のコラージュのアイディアも面白いです。版元品切。



海のおばけオーリー
エッツ文/絵 石井桃子訳/岩波書店


同じくエッツの作品から。オーリーの名誉のために言っておきますが、彼はおばけじゃあ、ありません。あわてもので勝手な人間たちのはや合点が原因なのでした。お母さんとはなればなれになったオーリーが、いろんなことがあったけど、やさしい水族館のおじさんのおかげで家に帰れるお話。このインパクト大な表紙からはわかりにくいけど、中身はあいかわらず、エッツお得意のモノクロの、ひょうひょうとした絵が、まんがみたいなこまわりの中で、動きます。街、水族館、海…知らない間に、モノクロの世界の舞台にひきこまれてしまうはず。




くろうまブランキー
伊東三郎再話/堀内誠一画/福音館こどものとも傑作集17

はらっぱのまんなかでうまれました
木のしたで寝るブランキー
やさしいサンタに出会って
いつもご主人にいじめられていたかわいいちいさなくろうま、ブランキーがしあわせになるお話で、フランスのフレネ学校の幼児グループが考えたお話を伊東三郎氏がまとめたもの。こどもたちの言葉を生かして、とてもシンプルな言葉で仕上がっているのですが、それだけにひとつひとつのことばがすうっと心に響く絵本です。そしてなんといってもそのお話に力を与えているのは堀内誠一氏の絵。絵本の仕事としては最初の仕事で、1958年26歳のときのものです。絵本を描きたいというキモチはあったのもの、なかなか思うような形にならかった時、このお話をもらって開眼、以後さまざまな絵本の仕事をわたしたちに残してくれました。そんな記念すべき作品。そして個人的にいちばん好きな作品です。なにごとにもある「いちばんさいしょのパワー」みたいなものを感じます。




The more the merrier
by Floremce Michelson/ illustrated by Anna Marie Magagna/A WHITMAN Tell-A-TALE BOOK

裏表紙のシリーズ紹介もかわいい
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ゴールデンブックスより一回り小さな絵本シリーズだったTell-a-tale bookの中から。文庫本より横が少し大きい程度のこのかわいいポケット絵本がでたのは1945年から1984年まででした。
おばあちゃんちにきたスーザンはひとりぼっち。外にでたスーザンは、いろんな動物たちに会います。どの動物たちも口をそろえて言うのは「THE MORE THE MERRIER!」(たくさんいればいるほど楽しい)どの動物にも「忙しい」といって遊んでもらえなかったスーザンが、最後に出会ったものは…。
動物たちと小さなオンナノコのかわいいイラストは、飾っておくだけでもしあわせ気分になれそう。



ずどんといっぱつ-すていぬシンプだいかつやく
ジョン・バーニンガムさく/わたなべしげおやく/童話館


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ジョンバーニンガムは、イギリスの作家。子どもにもオトナにも大好き、という人が多いのは、「子どもが何が好きかということを意識しない」というその姿勢のためではないでしょうか。その比較的初期の作品の中から、犬のお話を。ちっぽけでふとっちょでかわいげがない黒犬のシンプ、飼い主が見つからないまま、ごみ捨て場に捨てられたシンプの運命は…。繊細さと大胆さが同居したタッチ、さまざまな手法が同居しているジョンバーニンガムの世界をいちど、のぞいてみて。