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白いお姫さま マリア・ジェリチェコワ文/ミロスラフ・シパール絵/中村祐子他訳 新読書社 1990年初版 B5変型 翻訳の中村氏がパリの街角で見つけたシパール(ツィパール)の美しい表紙にひかれ、版元に問い合わせたことがきっかけで日本で出版されることになったチェコスロヴァキアの民話集。ツィパールの色彩を巧みに織りなした挿し絵が美しいです。この本がそれ以後続く中村氏とツィパールとの交友のきっかけになったようですが、そのあたりは「白いお姫さまを訪ねて」「ツィパールの世界」をご参照あれ。 表題ほか、「親ゆびこぞうのジャノー」「魔法のことば」「すばらしいうでの織姫」などジェリチェコワの再話で24話収録。巻末にジェリチェコワへのインタビューが載っていて、おばあさんが針仕事をしながら、童話やなぞなぞを語ってくれたお話など、昔のスロヴァキアの人々と民話のかかわりを垣間見ることができます。版元品切。 |
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ねむれる森の美女(名作バレー物語シリーズ) ペロー原作/オタ・ヤネチェック絵/高橋ひろゆき文 佑学社 1978年初版 A4変型 以前「しあわせの王子」の英語版をご紹介したヤネチェック。こちらは1970年代チェコアルバトロス社ものを集中的に出していた佑学社の名作バレーシリーズの1冊。ほかにも「白鳥の湖」や、「ペトルーシュカ」、「くるみわり人形」などのタイトルがクドゥラーチェク、イジンツォヴァー、ベルコバー、マニャーセックらそうそうたるメンツの絵で出てたチェコ好き垂涎のシリーズでした。 ヤネチェックは1940年代、ピカソやブラックに師事し、キュビズムの影響をうけつつも、叙情的な独自の世界を築いた人で、淡く渋い色あいと確かな線に特徴があります。この本は、お姫さまモノということで、人物画の合間合間にはさまれたバラや動物たちのカットがとても美しく、あらゆる事象にふうっと命の息吹を吹き込んだような、やわらかい詩の世界をつくりだすヤネチェックの魔法が生きています。絶版。 |
おんなのこはあめに出会いました みずたまりに、ぽちゃん おんなのこの目はちいさなみずうみみたい…。 |
おんなのことあめ ミレナ・ルケショバーぶん/ヤン・クドラーチェクえ たけだゆうこやく ほるぷ出版 1989年14刷 260*250 チェコで人気の画家、クドゥラーチェクの作品。全体に流れる絶妙なバランスの色彩感覚と点描に近い表現で描かれた「あめ」が、とても印象的。全体に淡い色づかいなのですが、あめのまわりの寒色系の色彩と、おんなのこの周りの暖色系の色彩が、一対になって、なんともいい感じの雨の表現です。「雨の肯定的表現」というべきかしら。ざあざあ、いやあなうっとうしい雨じゃなくて、静かにささやきかけてくるような、やさしい雨。そして最後にあらわれる虹色のかたつむり。ほんとなら、梅雨のときに紹介すべき絵本なんでしょうけど、この感じは、秋の雨っぽくもあると思いまして。あー、それにしても、ほんとに、ほんとにきれいな絵本、「あめ」といっしょにココロまで洗われるような気分です。絶版。 |
ちいさなオンナノコ かあさんのおかしができますよ おそろしいおと、なんのおと |
チェコのわらべうた おおきくなったら 内田莉莎子やく/ヨゼフ・ラダえ 福音館書店 1992年特製版 215*205 以前、ABCの本を紹介したチェコの代表的画家、トルンカ作品の美術担当でもあったヨゼフラダの本です。ボヘミアの農村の出身だけあって、チェコの田舎、フォークロアがお得意のラダらしく、チェコの古くから伝わるわらべうたに味のある絵をつけています。「まぬけのやん/つぼわった/なきなきかえって/あめだまもらった」なんて感じの、マザーグースに負けずとも劣らないナンセンスさのわらべうた、マザーグースと違うところはより牧歌的でのびのびとしたテイストってところでしょうか。パブロピカソをして、「この男は私と同じくらい自由にフォルムを操作している」と言わしめたラダの素朴で愉快なタッチとともにお楽しみください。福音館子どものとも年少版からの一冊、現在入手不可です。 |
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むぎうちヨナス クルト・バウマン文/マルタ・コチ絵/大塚勇三訳 文化出版局 1982年初版 307*203 農場モノ…といえば、やはりこの人をはずすことはできないです。半農半芸?ともいえる画家、マルタコチ。以前「イワンとがらくたべやのともだち」をご紹介したことがあります。 村じゅうがヨナスがくるのをまってました。だってヨナスはすてきな機械をもっているからです…コンバインというものです! コンバインにのってはりきってやってきたヨナス。でも結局風邪をひいてしまって、麦かりの季節は終わってしまいます。はたして、ヨナスはいまは無用の長物と化したコンバインをお家に変えてしまいました。とってもステキなアイデアで! 個人的にはマルタコチが描く人物がだいすきで、この本も、ついつい人物の親しみある表情に目がいきます。決して派手な本ではないのですが、麦畑や、そこではたらく人たちのようす、コンバインの中の家がまるで秘密基地のようで、ちびっこ心をくすぐります。そんなところも、根づよい人気から最近復刊された背景にあるのかもしれません。現在リブリオ出版より1,900円。 |
川を旅して 空に帰る しりたがりやのくも 野原とまち |
フローラルえほん あまつぶさん/くもさんなにをみた 作/絵イワン・ガンチェフ/文高田敏子(あまつぶさん) 作/絵アンナ・ツスソウバ/文高村喜美子 学研 1981初版 A4横変 学研のシリーズフローラルは、ヨーロッパの作家に強く、東欧、中欧の知る人ぞ知る作家を紹介していました。1冊に2つずつのお話を収録、ひとつぶで2度のお楽しみがあるのもうれしいところ。この本のテーマが雨と雲だけに、表紙は青い雨のイメージ、でも中をひらくととてもカラフルな色の洪水。 「あまつぶさん」は、あのネコ好きならはずせない「しあわせみつけた」でおなじみイワン・ガンチェフのお話。あまつぶさんの名前はきらくん。雨になって、かわいい花をめざしてとびおります。はっぱの上に落ちて、地面にしみこみ、川を流れて魚に会い、みどりのもりをぬけて海へ、そしてまたそらにかえったきらくんはまたあの花をめざします…。いつものように、水彩の絵の具をじんわりとしみ込ませたようなガンチェフのタッチ、なんともさわやかで、美しい世界です。 「くもさんなにをみた」はしりたがりやのちいさな雲のお話。くもくんのはいいろの世界で、雪の女王はうつくしいレースを編み、遠い国のお話をしてくれます。どうしても山の向こうにいってみたくなったくもくんは女王に、ふきとばしてくれるようにお願いします…。ブルガリアのアンナ・ツスソウバは、とにかく色づかいとモチーフ使いがきれい。美しいレース編みのような雪の結晶と森の木々、スワロフスキーのビーズのような雨つぶ…。 |
花の上におっこちた ほたるのおじさんはっけん これがちびとらちゃん うまにほめられる |
ちびむしちゃんのさんぽ/ちびとらちゃん 作・絵ヤン・クドラチェック/文高田敏子(ちびむし) 作・絵ヨゼフ・パレチェック/文まつむらよしお(ちびとら) 学研 1984年 A4変 これはフローラルのシリーズの中でも、重要な1冊。なにしろクドゥラーチェクとパレチェックが1冊で楽しめるという豪華企画です。ちびちびコンビのちびむしちゃんと、ちびとらちゃんのちいさな冒険のお話。 こちらではおなじみのクドゥラーチェクの「ちびむしちゃん」。もう毎度のことですが、この人の絵はため息しか出ないです。天才。あたりまえの自然をきちんとリアルに描きながら、まるで奇跡のような美しさです。ちびむしちゃんはひとりでおさんぽに。たんぽぽのわたげに乗って、お花ばたけへ。はっぱにはきらきらつゆのたま。 そして、パレチェックの愛くるしい「ちびとらちゃん」勇気のないちびとらちゃんが、お母さんのために勇気をだしてお医者さんをよびにいくお話です。こちらもまさにパレチェックといった感じの巧妙な色づかいの中で、キャラ立ちした登場人物(動物)。もうぜんぶぬいぐるみにして手元においておきたいという、かわいさです。 |
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Pohadka O Ptaku Klabiznakovi by Vaclav Ctvrtek, illustration by Gabriela Dubska Albatros,丸善ソンリーサ35,1988年(copyright) 258*195 丸善メイツが1990年代のはじめに「ソンリーサ」と銘打って、世界各国の非常に美しい絵本を70冊セットで販売したことがありました。バーニンガムや、ル・カイン、レオ・レオーニなどの有名どころから、このドゥプスカなど日本で未紹介の作家も多く含んだ、まさに「絵本の世界一周」といった趣きの魅力的なセットだったのですが、セット販売のみで20万ちょっとして、さすがに当時はバブリーだったとはいえ、わたしは手をだせず、涙をのんであきらめた記憶があります。現在は本国でもアウトオブプリントになった本も多数含まれています。ソンリーサはまだ在庫がありますので、お探しの巻があるかたはご一報を。 こちらは、そのソンリーサのチェコの巻、「ことりのクラビズニャーク」。くじゃくに憧れたことりのお話です。作者のチトゥヴルテックはチェコのちびっこがだいすきな「ルムツァイス」という義賊をテーマにしたシリーズでも有名なひと。テキストチェコ語。 |